チョコと男女教育格差の甘くない関係


 

チョコレートの年間消費量の2割がこの日に消費されると言われるほどの日本の国民的イベントでもあるバレンタインデー。日本では女性が好きな男性にチョコレートを贈る習慣は次第に少なくなり、代わりに自分へのご褒美として高級チョコを購入する日となったのでしょうか。それでも、女子にもスイーツ男子にも甘~い一日であることは間違いないでしょう。そんなバレンタインデーの歴史をひも解くと、チョコと男女教育格差に「ある関係」があることが分かりました。

Vol.52 (6日目)【一粒のチョコ】
デリーでスラムの子どもにもらったチョコレート

日本でのバレンタインデーの歴史

1970年代後半に、流通業界や製菓業界の販売促進によって「女性が男性に親愛を込めてチョコを贈る日」として定着したのが日本での始まりだそうです。これは日本独自の進化をたどった日本型バレンタインデーであり、「チョコに限定・女性から男性へ・愛情表明の機会」というのは諸外国にない形のようです。現在でも義理チョコ、ファミチョコ、友チョコ、逆チョコ、自分(ご褒美)チョコ、、と独自進化を続けています。

*今を知りたい方はこちらをチェック→バレンタイン実態調査2015 (マクロミル社)

 

世界のバレンタインデーの歴史

2月14日に祝われていたキリスト教の元聖名祝日。現在カトリック教会の正式な祭日ではないが、世界各地で男女の愛の誓いの日に意味を変え継続して祝われている。269年か270年、273年のいずれかに殉教したとされるてんかんの聖人ウァレンティヌス(テルニのバレンタイン)を悼み祈りを捧げる日であり、ウァレンティヌスおよびバレンタインデーは恋人達のロマンスとは無関係であった。 15世紀頃より急速に男女の恋愛の聖人と記念日へと変貌する。(wikipediaより)

西欧やアメリカでは、日本とは異なり男性も女性も、花やケーキ、カードなど様々な贈り物を恋人や親しい人に贈ることがある日とされています。主にキリスト教(西方教会)地域を中心に広がった習慣なので、他の宗教・会派(東方教会・イスラム教・仏教など)の地域にはあまりなじみのなかった行事のようです。ただ、世界中でクリスマスが行事であるように、近年は商業主義とともにそれらの地域にも広がりを見せているのが現状です。

 

バレンタインデーと女性の進学率?!

上記のように、西欧文化の流入がバレンタインデー習慣の普及に密接な関係があります。すなわち先進国においては早くから習慣が定着し、新興国や途上国では近年になってから商業的に普及していったことが分かります。経済発展による購買力上昇に伴い、プレゼントを贈るという習慣も次第に高まっていくようです。

2012年 出典:UNESCO
2012年 出典:UNESCO

このグラフを見ると、経済発展と女性の大学進学率の関係が分かります。データは省きましたが、ASEAN諸国は概ね30%から50%台が多く、経済の発展とともに女性が高等教育を受けて社会進出を目指す確率が高まることを表しています。日本は58.22%、世界平均は33.25%です。アジア最貧国のネパールは11.42%と低く、ブータン(7.7%)やアフガニスタン(1.85%)は世界ワーストの水準です。

【インドの事情】
購買力平価のGDPで日本を抜き世界第3位の経済力をもつインドですが、ヒンズー教の男尊女卑の慣習が根強く、世界106位に止まります。大学進学率そのものも低いのが特徴です。

【ブータンの事情】
GNH(国民総幸福量)の最大化を掲げるブータンでは今でも義務教育がなく、2003年まではひとつの大学しかありませんでした。現在は教育を重点政策として就学率の向上に向けて取り組んでいる最中です。

【アフガニスタンの事情】
ソ連侵攻やこれに続く内戦の影響で多くの学校などの教育基盤が破壊されました。また、タリバン政権時代には女性教員の就労や女子への教育も原則禁止された影響が大きく出ています。1.85%で世界155位(統計上最下位)。

【モンゴルの事情】
モンゴルは国民が教育に熱心です。伝統的に女性の大学進学率が高いのが特徴です。学校の教職員も女性が圧倒的に多数を占めます。日本を大きく上回る進学率の高さ(72.38%)は驚異的です。

 

経済格差は教育格差と男女格差?

2012年 出典:UNESCO
2012年 出典:UNESCO

このグラフでは男女別に並べてみました。男女の進学率の差が分かります。基本的には経済発展に従って女性の社会進出が高まり、男女格差が縮まる傾向があると思われます。しかし、モンゴルのような特殊な例(女性が22%も高値)もあれば、インドのような宗教的な理由(約6%差)まで、国の事情は様々です。一概に経済格差が男女教育格差につながるとは言えないようです。

2014年 出典:WEF
2014年 出典:WEF(世界経済フォーラム)

こちらは、4項目で識字率、初等・中等・高等教育の進学率の男女格差を指数化したものです。大学(高等教育)のみでなく、総合的に男女教育格差を表していると思います。

男女別格差指数とは、WEF(世界経済フォーラム)の世界男女別格差報告による国別順位・国際比較ランキング。教育の到達度は、識字率の格差、基礎教育進学率の格差、中等教育進学率の格差、高等教育進学率の格差の4項目を0-1のスコアによって格差を評価している。1に近いほど男女平等を表す。グラフは指数を100倍にして表示。

インドは女性の大学進学率では世界106位でしたが、この総合的な男女教育格差でみると85.03のスコアで世界126位に順位を落とします。さきほどのグラフまでは優位を保っていたネパールやブータンよりも下位に順じます。グラフで右横に表示したチャドが142位で統計上の世界最下位ですので、インドはやはり男女教育格差が最も大きな国のひとつとなります。

 

現地へ行かないと見えてこないもの

もはやチョコレートとは関係なくなってしまった感がありますが笑、まとめてみます。

■ 経済格差は教育格差につながる(バレンタイン普及と近似相関)
■ 経済格差が男女教育格差につながるとは必ずしも言えない
■ その国の歴史や宗教・慣習等を考慮した上で課題点を探ることが重要

ましてやインドは、多宗教、多民族、多言語、多階層の複雑な国家です。実質世界第3位の経済大国という表面だけでは到底測れない、様々な側面と問題点を抱えています。性別だけでなく、地域別や居住区や民族その他のデータ(可能であれば)による分析が必要だと考えます。

前回お伝えした(チベット難民の大学進学率)12.86%もそうです。スラムでも大学へ進学することが奇跡のような状態ですので、おそらくアフガニスタンを下回る状態だと推測します(データ存在せず)。国家という統計データだけでは社会的な問題点を見つけることは困難ですし限界があります。きっと現地へ行かないと見えてこない問題がそこにはあるはずです。レインボーチルドレンではそんな光の当たっていない社会的課題を解決していくプロジェクトを続けていきたいと考えています。

 

レインボーチルドレン奨学金制度は女性を応援します!

チベット難民を対象としたレインボーチルドレン奨学金は、現在30名がインドの大学に通っています。

奨学生内訳
2014夏入学まで、現在30名

その内訳は、女子が20名(66.6%)男子が10名(33.3%)となっています。これは特に意図した結果ではなかったのですが、上記のようなインドの現状を踏まえて今後は女性を応援していく方針で奨学生の選考をしていきたいと考えます。

この夏には25名の新入学を加えて、合計55名体制とする計画です。新しい25名は女子16名、男子9名ほどが現在の男女比でしょうか。3月初旬にもうすぐ訪問するダラムサラの教育省とも話し合ってみたいと思います。

 

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バレンタイン2
スラムの子どもたちへもプレゼント!