ラール・キラー市場火災報告(2017.3.17市場幹部面談)


 

デリー(マジュヌカティラ)でラール・キラー チベタンセーター市場の幹部と面談し、昨年の火災の被害状況と現在の様子を伺ってきました。

ラール・キラー市場は世界遺産レッド・フォート(別名ラール・キラー)の近くにある、チベット難民のウィンターマーケットのことです。昨年2016年11月8日(ルピーショックと同日)に火災が発生し、市場は全焼しました。

全焼したラール・キラー市場。火災の翌日(撮影:市場関係者)

レインボーチルドレンでは昨年末のルピー募金で集まった内、30万ルピー(今日現在約51万円)を市場の組合へ寄付をさせて頂きました。

火災発生から5か月と少し、市場の復興や関係者家族の今はどうなっているのでしょうか?

市場幹部と面談の様子。2017年3月17日(撮影:北條直樹)

対応頂いたのは、デリーに在住する4人の市場幹部のうち、Pema Tsetanさん、Gyaltsenさん、Tashi Nyimaさんの3人です。

 

ーまず被害の状況を教えてください。

2016年11月8日の深夜に火災が発生しました。市場は木の柱とテントで作られた燃えやすい材質でできており、商品のセーターや衣類も燃えやすく、あっという間に燃え広がりました。すべてが灰になるのにそう時間はかかりませんでした。

全焼したラール・キラー市場。火災の直後(撮影:市場関係者)

ー市場にはどれくらいの店舗が入っていたのですか?

138店舗です。すべてが焼け野原となってしまいました。

写真を使いながら説明してくれました。2017年3月17日(撮影:北條直樹)

ー火災の原因は何だったのですか?

電線のショートだと言われています。ご存知のようにオールド・デリーは頭上にクモの巣ように電線が張り巡らされています。切れた電線からテントへ火が移ったのでしょう。

全焼したラール・キラー市場。一夜明けて(撮影:市場関係者)

ーお店も商品もすべて燃えてしまって、被害の額は大きかったでしょう?

はい。総被害額は13クロール(1クロールは1千万ルピー、日本円にして約2億2千万円)でした。お店や商品だけでなく、お店に置いてあったそれまでの売り上げのお金までも一緒に燃えてしまいました。

燃えてしまった紙幣や硬貨(撮影:市場関係者)

ーウィンターマーケットで働くチベット難民たちは、冬の間だけで収入を得ていると聞きましたが。

そうです。毎年10月15日から翌年2月15日まで市場を開いて、そこで1年分の収入を得るのです。この冬は収入につながらなかったばかりか、各店舗は大きな借金を背負うことになりました。

すべてが燃えてしまいました。火災の翌日(撮影:市場関係者)

ーそれは大変ですね。お子さんたちの就学にも影響があるんじゃないですか?

各家庭で2~3人の子どもがいますから、食べていくのも大変ですし、子どもたちの学校に必要なお金も苦しい状況になります。

ー各店舗単位での被害の実情を教えてください。

各店舗では、おそらく8~9ラック(約136万~152万円相当)の実質損失になると思われます。火災の後、デリー州政府から各店舗に1ラック、インド中からの寄付によって約1ラックが配布されました。チベット亡命政府から合計で15ラック、ダライ・ラマ法王基金からも50ラックの支援があり、それらは組合として焼けた土地の改善、新しく市場を再建するための費用に充てられます。共同ショップの立ち上げ費用にも使われました。

土地を整備したラール・キラー市場(撮影:市場関係者)

ー共同ショップとは何ですか?

火災から1か月後、12月3日4日には、40店舗の共同ショップをオープンしました。残りの冬の期間何もしないままでは今年1年間食べれないことになります。そこで共同ショップを運営して、その売り上げは全体で分配したのです。

ー火災1か月後に仮店舗を立ち上げたんですか?たくましいですね。

(しかし、3分の1以下の規模で例年の半分の期間しか営業できなかったため、配分された共同ショップの利益はごく僅かであったことが予想されます。)

共同ショップの様子(撮影:市場関係者)
復興の視察に来たロブサン・センゲ首相(撮影:市場関係者)

ー今後の計画を教えてください。

また10月から今年の市場が始まります。そこからは組合ではなく、各店舗での経営に戻ります。準備も仕入れも売り上げも各自ということになります。損失は大きかったですが、仕方ありません。また歯を食いしばって頑張らねばなりません。

ー最後に一言お願いします。

昨年末は日本中より集まった募金で支援下さり、本当にありがとうございました。心より感謝しています。海の向こう側から応援くださった皆さまがいることが、とても励みになりました。絶望から未来へ向かう元気となりました。もう一度、本当にありがとうございました。

別の場所のウィンターマーケットで母と2人で生計を立てているレイチルメンバーのナムドルも応援に駆けつけてくれました(撮影:北條直樹)
全員に感謝の白い布カタが渡されました(撮影:北條直樹)

 

面談を終えて、改めて火災の被害の大きさを認識すると共に、ウィンターマーケットでしか仕事を見つけることができないインドの中でのチベット難民の窮状、そしてその仕事さえ奪ってしまった火災という不意の災難を疎ましく思いました。

しかし、ネパール地震で現地を訪れた際にも感じましたが、それに屈しないチベット人たちの強さ、たくましさにも驚かされました。火災後1か月には共同ショップを始めていたことは、その時期しか商売を許されないチベット難民としての意地でしょうか、団結の力を見せつけられました。

しかし、その時に彼らの力になれたことは大きかったと思います。金額の大小ではなく、チベット社会・インド社会以外からも日本という応援する存在があることを知らせることができたと思いますし、火災から1か月という早さで日本からの支援金を直に届けることができました。

ルピー募金へ協力くださった皆さま、本当にありがとうございました。

深く、心より御礼申し上げます。