チベット難民の大学進学率


 

前回秋にダラムサラの教育省を訪れ、教育大臣から伺ったデータを基に、チベット難民の大学進学率を各国のデータと比較してみました。現在チベットという国家はなく、国連にはデータが存在しません。また、チベット本土(中国・チベット自治区)のデータも存在しないため、インドの中のチベット(チベット難民)のデータで厳しい難民社会の高等教育の現状をお伝えします。

大学進学率
2012年 出典:UNESCO / チベット難民データは2014年 中央チベット政権CTA教育省より

アジアでの比較

アジアの大学進学率トップは98.37%で韓国(世界2位)です。日本は韓国、オーストラリア、ニュージーランド、マカオの次で61.45%(〃41位)、決して高い比較として表示しているのではありません。インドは前回(インドはITエンジニア大国。でも大学進学率はワースト?!)お伝えしたように24.76%(〃97位)で非常に低い進学率です。アジアで最貧国とされる隣のネパールは14.49%(〃113位)でさらに低い数値となっています。そして、チベット難民の進学率は12.86%で最貧国ネパールを下回る数値となっています

 

チベット難民の高等教育の現状

世界中に拡がるチベット難民社会ですが、その多くはインド・ネパール・ブータンに約121,500人(2002年現在)が暮らしています。その3国に76校のチベット人学校(TCV、CSTなど)があり、現在約16,000人のチベットの子どもたちが学んでいます。それらの学校では幼稚園から12年生(高校3年生相当)までが学べます。

2014年は12年生を卒業した約1,400人のうち180名が奨学金を得て大学へ進学することができました。難民社会では家庭の経済状態から自力で進学できる学生は皆無です。奨学金がないと大学への進学は叶わないのです。180名の新たな奨学生のうち、その多くをダライ・ラマ法王基金の奨学金制度が占め、残りをいくつかの欧米の支援団体やレインボーチルドレン奨学金(2014年度20名)が支えています。

奨学金状況2014
出典:中央チベット政権教育省2014

2013年までは奨学金進学の数は100名を下回っていました。卒業数が同じとして計算すると、大学進学率はわずか5%台だったのです。これは国連にデータのある約155カ国のワースト5に入るレベルでした。しかし、2014年は大幅に奨学生を増やすことができたので、より多くの優秀な子どもたちが現在大学1年生として学んでいます。

それでもアジア最貧国ネパールの進学率を下回り、また残念ながら奨学金に落選した子どもたちは、インドの軍隊かチベット寺院、もしくは無職のいずれかの選択肢を選ばなければなりません。

 

チベット難民政府の目指す高等教育

1959年にダライ・ラマ法王が亡命し、インドを中心としたチベット難民社会が生まれ、ダラムサラには難民政府(中央チベット政権CTA)が置かれました。亡命当初より「仏教・文化・教育」を3本柱として取り組まれてきた結果、TCV(チベット子供村)を中心とするチベット人学校では国際的にもレベルの高い教育が行われ、12年生までチベット式の英才教育を受けます。

しかしながら、それより先の大学または専門学校(高等教育)への道が閉ざされ、チベットの将来を担う専門家レベルの人材がなかなか育たない現状に対し、現政権のロブサン・センゲ首相は2013年より「高等教育」を重点政策のひとつに掲げました。

チベットを支える未来のリーダーは、専門的教育を受けた高度な人材から生まれます。そして、それは各国の奨学金支援により、支えられているのです。

 

国を作るのは人材!~レインボーチルドレン奨学金制度

2012年より始めた、チベットの子どもたちがインドの大学に進学するための奨学金制度です。現在30名のチベット学生が大学で学んでいます。2015年度は25名の進学枠を設け、55名体制を予定しています。そして2017年には100名体制を目指しています。

奨学生グラフ
レインボーチルドレン奨学金計画 (2014まで実績)

 

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