チベットプロジェクト最終寄付金について②


<はじめに>

すでに2022年5月末に送金、報告済みのチベットプロジェクト最終寄付に続き、2022年6月末締め分の継続寄付サポーター様や全国に設置いただいていた「みらいの貯金箱」サポーター様からの最終寄付金についてご報告させていだきます。

※前回のレポート【チベットプロジェクト最終寄付金について】はこちらをご参照ください。
http://rainbowchildren.holy.jp/archives/15780


<Mewoen Tsuglag Petoen Schoolについて>


もう一つのチベットプロジェクト最終寄付は、私たちが毎年、春と秋のスタディツアーの中で何度も訪問させていただいた、Mewoen Tsuglag Petoen School(ペトンスクール)へ寄付させていただくことに決定いたしました。

ペトンスクール

 

ペトンスクールは、チベット亡命政府教育省によって設立された、亡命中のチベット人のための基本的な教育政策を実施するモデル校です。
特徴的なのは、伝統的な教育に加え、近代的な教育プログラムを取り入れていることです。

授業風景-1 

 

取り分け、重点を置いているのが語学・言語教育。
クラスIIIまでのいわゆる初等教育では、授業は母国語、つまりチベット語のみで行われ、その後、学年が上がっていくごとに第二、第三言語の教育(英語、ヒンディー語、中国語)も取り入れ、総合的な語学力・言語力を身につけるためのプログラムが組まれています。

授業風景-2

 

前校長先生


私たちが学校を訪問した際にも、校長先生がこの教育方針を詳しく説明してくださりました。

この背景には、日本の教育事情とは全く異なる亡命社会独自の事情があります。

 

<Mewoen Tsuglag Petoen Schoolの教育方針について>

政治的、歴史的な問題により、現在チベット本土におけるチベット語教育はますます厳しさを増しています。近年、多くのチベット学校や家庭で、チベット語やチベットの歴史について学ぶこと、あるいは教えることが公的に禁じられ、地域や学校には監視役が置かれ、それらを破ったと見なされた場合には警察に即逮捕されるケースもあります。
国を奪われた上に、言語という最も重要な文化の一つまでも、消し去られようとしている状況です。

授業風景-3

 

そのため、ペトンスクールの教育方針としては、まずは大前提として母国語であるチベット語教育を充実させ、チベット文化を保護・継承してゆくこと。かつ、インド社会で生活する上で必須の外国語言語を習得することです。

たとえば、親がインド生まれ、あるいは親が幼い頃に亡命し、生まれた子どもたちの場合、親がチベット語を充分に習得できていない可能性があり、家庭でチベット語を教えるのが困難な場合があります。そのため、子どもたちが正しいチベット語を学校で学べる環境はとても大切です。

チベット語のノート

 

その逆で、親がチベットである程度生まれ育った後に亡命し、生まれた子どもたちの場合、親が英語やヒンディー語を習得できない場合があります。
インドでは、英語も通じますが、人や地域によっては十分な英語教育を受けておらず通じないことがあり、病院に行く時や助けを求めたい時、お金が関わる問題など、生活の中で言語が通じないと非常に困る場面も多々おとずれます。
インド社会で将来仕事に就くとなった場合にも、ヒンディー語が理解できると選択肢が広がります。

また、家族や親戚と共に、または留学や就職の機会を得て、英語圏の諸外国へと移住するケースが多いのも亡命社会ではよくあることです。
移住先での生活では当然英語が必要になります。

このように、日本人が外国語が全く使えなかったとしても母国語だけで生きてゆける日本とは違い、亡命社会の子どもたちは母国語に加え、第二言語、第三言語まで使えることも生きていくうえでとても重要なのです。

カメラプロジェクトの時の集合写真

 

ペトンスクールでは、こういったチベット亡命社会の背景を踏まえ、子どもたちがアイデンティティーを保ちながら、できるだけ不自由なく生活していけるように、教育方針を組み立てています。

 

<最終寄付金の受け渡し、使途について>

今回、ペトンスクールへの寄付にあたり、現地での受け渡しや校長先生へのインタビューなどを友人のPema Gyalが務めてくれました。Pema Gyalはレインボーチルドレンの奨学生でも現地ボランティアでもありませんが、亡命社会におけるチベット語教育の重要性について長年関心を寄せてきた人物で、今回のコーディネートについても強く賛同し、協力してくれました。

校長先生とペマ

 

校長先生のお話より、現在ペトンスクールではコロナ禍や世界情勢の影響により、予算不足のため停滞し続けているプロジェクトがあることがわかりました。

1つは、Language Laboratory(LL教室、いわゆる語学演習室)の設立。
これは、従来の伝統的な読み書き教育に加え、近代的な視聴覚教育を取り入れたプロジェクトです。そこで子どもたちが必要な視聴覚教材や機材が予算が通らず不足しているとのことでした。

LL教室の建物

 

もう1つは、スクールバスの問題。
遠隔地から通学する子どもたちの増加、ガソリンの価格の上昇、そして道路整備ができていないこの街で一日に何往復もするスクールバスは頻繁にメンテナンスが必要となり、そのメンテナンス費用も年々上昇しているのだそうです。

スクールバス

 

今回の寄付金では、それらプロジェクトの予算総額を賄うことはできませんが、話し合いの結果、優先的にLL教室で不足していた子どもたちの教材や機材の費用に充てていただくことになりました。

 

現校長先生

 

校長先生からは、予算の申請がなかなか通らず困難な状況だったところ、今回の寄付のお話をいただき、子どもたちのより良い教育のため一歩前進できて非常に感謝しています、とのお言葉をいただきました。

Thank you letter

 

また、ご丁寧にお手紙もいただ本当にありがとうございました。

 

<最終寄付金額について>


2022年6月末締めの継続寄付サポーター様や、全国に設置いただいていた「みらいの貯金箱」サポーター様からの最終寄付金は総額156,558円 (≒ 91817.20ルピー)となりました。
ここから外国送金手数料が引かれた、91,037ルピー(≒ 155,411円)を7月4日付けでペトンスクールへ送金完了いたしました。

ここまで長きに渡っての、継続寄付サポーターの皆様、「みらいの貯金箱」を設置してくださったサポーターの皆様や募金してくださった皆様に、心からの感謝を申し上げます。
温かいご支援、本当にありがとうございました。