スタディツアー参加者感想文(2014秋)


 

第六回秋スタ参加 三村優子(ボイストレーナー/東京)

虹はもう架かっていた。

-Incredible India
それは、インドに行くことが決まった直後、交差点で信号待ちをしていたときに、偶然目の前を通り過ぎたインド政府観光局のバスに、ドーンと書かれていた印象的な言葉でした。
Incredible
“信じられないくらいの”とか、”驚くべき”とかいう意味。
初めて訪れるインドという国で、どんな信じられない、驚くべき体験をするんだろう?と、この時はまだ、ワクワクとした気持ちだけが先行していました。
でも漠然とながらも、この旅はきっと今のわたしにとって一番必要なテーマを映し出してくれる体験になるに違いないと、心の何処かで確信していました。
ツアーの最後にも聞かれたのですが、『一番印象に残っていることは?』というと、やっぱり今でも、目を閉じると最初に浮かんでくるのは、どんな素晴らしい世界遺産よりも、そこで出会ったひとびとの顔です。
そして、チベット子供村や、たくさんのスラムを廻って、常に心に触れていたワードは『家族』『コミュニティ』でした。
生まれてからずっと日本で暮らしてきたわたしにとっては、国家レベルでの迫害や紛争、厳しい身分制度をリアルに体験することはなく、ツアーで出会ったチベット難民の人たちや、スラムに暮らす人たちのことを、実際にその状況を経験しない限り、本当の意味で『理解』することは多分一生出来ないだろう、と、今でもそう思います。
だけど、わたしがフォーカスしていたのは、『理解』出来ないことではなく、『理解』出来ないからこそ『想像』できるということ。
そしてその『想像』から、『創造』を生み出していけるということ。
日本は平和だと言われますが、一見国家レベルでの迫害や紛争がないように見え、その実小さなコミュ二ティの中では、いじめや争いごとが絶えず、こころを病んだり、自ら命を絶つひともいます。
頼りがない老人の孤独死や、親から子への虐待、隣人トラブル、、
平和と言われる小さな島国でも、小さなコミュニティ単位で平和に溢れているとは決して言えないのです。
東日本大震災後、高齢者の住む仮設住宅へお伺いしたときも、そこに住む方々の切実な生の声をお聞きすることができました。
決して日本のメディアでは取り上げられることのないようなことも
被災者ではないわたしは、そのときも思いました。
きっと『理解』するなんていうのは嘘になる、だからわたしは精一杯『想像』しよう。想像が正しいか間違っているかはわからないし、きっと答えはない。
だけど、想像することで、今、理解できないひとびとのこころに寄り添えるかもしれない。寄り添うことで、新たな今を創造できるかもしれない。それは、小さなコミュニティの枠を越えて、そしてあらゆる境界を越えてひとつであることなのかもしれない。

わたしは今回のツアーでインドの全てを見たわけではありません。
無論、世界の全てを見たわけでもありません。
だけど、わたしはこの10日間でリアルに出会ったひとびとから、めいいっぱい想像しました。
想像の正誤性や答えはわかりません。
でも確かに、大きな気づきをいただきました。

image血の繋がりなど関係なくひとつの家族として暮らすチベット子供村のみんな、
人数分のお花の蕾をわたしたちに持ってきてくれた少年、
お兄ちゃんお姉ちゃんが、からだの半分を使って赤ちゃんを抱っこしあやす姿、
遠く離れた家族のために、一日中工場で泥汗まみれで働くひとびと、
瓦礫や糞尿の散乱する地面を裸足で歩きながら、手をつないだわたしを見上げた少女の瞳、
言葉が上手く話せなくても、力いっぱいにわたしを抱きしめてくれた少年のぬくもり、
初めて会ったわたしの頬にキスをしてくれた子供たち。
突然やってきたわたしたちに『Namaste』と手を合わせ笑顔で返してくれたひとびと・・・
ここには書ききれないくらいのたくさんのひとびとの顔や姿が浮かびます。
思い出す彼らとの瞬間には、国が、環境が、そういったものはピンときませんでした。だから、胸がぎゅっと掴まれる瞬間はあっても、ただ不憫だとか可哀想だとか、そういう感情がまったく芽生えませんでした。
-ただ、今を、生きる
-今あるその命を生き抜く
その力強さをとにかく感じたのです。
そしてみながひとつの家族として、コミュニティを築き上げる。時に、ぶつかったりしながらも。

image (1)今回、シャディプールの学校で子供たちに完成させてもらった、Love Rainbow。
子供たちに多くの説明は不要でした。小さな指先でひとつひとつ押して完成させた一枚のまぁるい虹は、もうすでに子供たちのこころに架かっているのだな、と感じました。
わたしたちがその虹を新たに架けたのではなく、わたしたちはいつだってこころに虹を架けることができると、そのことに気づかせてもらったのだと思いました。

Incredible India。
信じられないくらいの、驚くべきインド。
わたしにとって初めてのインド。
それは、わたしにとって出会ったひとびとの力強く生きるちからであり、
今、ここにある生に改めて感謝せずにいられない信じられないくらい、驚くべき学びを与えてくれる旅でした。
きょうもこの空と同じ太陽が、インドのあの街のあのひとびとを照らしていることを想像しながら、わたしも今を生きていきます。

最後に、Rainbow Children 石川さん、北條さん、
ツアーの仲間、この旅でご縁をいただいたみなさん、
日本でわたしの旅を支えてくれていた皆に、
こころからありがとうございます。