レインボーチルドレンの辿った五年間の軌跡


 

2012年3月の初めてのチベット難民社会訪問から数えて、11回目となる訪問を終えて帰国しました。インド訪問自体は14回目となりました。

当初個人として3名の大学生の進学支援を始めてから、在学100名を目標に活動してきましたが、今年(2017年秋)はその100名を達成できる予定です。

その5年・100名という区切りの年に当たり、春か秋の訪問時にダライ・ラマ法王に謁見して報告したいと考えていましたが、2月時点では残念ながら我々がダラムサラに滞在する期間中には法王様は海外におられる予定でした。

忙しく世界中を巡られている法王様がダラムサラの公邸におられる期間に調整して訪問することは、なかなか難しいのです。メンバー全員がそれぞれの仕事を持ち、それぞれの予定をやりくりしてインドへ向かうというのが現在の姿なので、直前に日程を調整することは困難です。

ですので、春、秋どちらかで奇跡的にタイミングが合うことを願っていました。すると、法王さまが海外へ出発される日程が先送りになり、追加で2日間のティーチングが開催されることが発表されました。出発3週間前のことです。

ティーチングがあるということはダラムサラにおられるということで、謁見するチャンスかも知れないと教育省を通じて法王庁に意向を伝えました。しかし、3月10日のアップライジングデーや12日のウーマンデーを挟み、諸外国からも様々な団体が訪問します。予定は分からぬまま日本を出国することになりました。

「運が良ければ今回、駄目なら次回の秋に。」

ダラムサラ滞在中は他の予定がぎっしり詰まっていました。こちらももし実現すれば、どこに予定を滑り込ませたらいいのか分からないほどです。すべては運と教育省の采配に任せて、目の前のプロジェクト活動に集中することにしました。

ライ・ラマ法王が神変大祈願祭の法話を行なわれたツクラカン中庭の光景。2017年3月12日、インド、ヒマチャール・プラデーシュ州 ダラムサラ(撮影:テンジン・チュンジョル / 法王庁)

ダラムサラ到着初日に、12時間のバス移動で到着したその足でティーチングに参加し、いつものようにお姿を拝見しました。最近は会場に入るセキュリティチェックも年々厳しくなっていますが、教育省の配慮によって特別にお堂の中のお顔が拝見できる場所で法話を聞きました。最近は大勢の聴衆の中でお会いすることは普通になりましたが、個別に時間を頂いて謁見することはまったく別のことです。

ツクラカンの中庭で法話を行なわれるダライ・ラマ法王。2017年3月12日、インド、ヒマチャール・プラデーシュ州 ダラムサラ(撮影:テンジン・チュンジョル / 法王庁)

チベット仏教の頂点であり、チベット社会の中心にいる法王さまに謁見することは、外国人である我々にとっては勿論ですが、チベット人にとっても特別なことです。願ってもその機会はそう巡って来ません。この時点では聴衆の一人となり謁見は諦めていました。

その夕方に教育省との会議が予定されていました。ノドゥプ教育大臣、教育省幹部と次期奨学生の選考について、いつもより長い時間話し合いました。

教育省にて大臣、教育省幹部と。2017年3月13日(撮影:北條直樹)

その会議が終わりに近づいたころ、担当者から「明日の早朝6時半に謁見が決まった!明日はフランスの団体と日本のレインボーチルドレンだけだ。」と告げられました。翌日は6つ7つの予定が詰まった一番ハードな日でしたが、早朝は何もないベストタイミングです。ひとつの予定だけを一日先に変更して、謁見に臨むことになりました。

公邸前でダライ・ラマ法王と。2017年3月14日(撮影:法王庁)

早朝6時半から1時間ほど待ってようやく謁見が実現しました。握っていただいたその手は温かく、とても柔らかい慈愛に満ちた手でした。ご多忙の中(この直後はツクラカンのティーチング会場へ移動されました)で公邸内のお部屋ではありませんでしたが、初めてきちんとお会いすることができました。教育省担当者より団体説明を伝えるのでこちらから話してはいけないということで言葉を交わすことはありませんでしたが、以前ティーチング会場で日本語通訳のマリアさんより紹介いただいた際のお言葉「Thank you」とは異なる

「Appreciate!」

という言葉を頂戴しました。

チベット国会議事堂にて。2017年3月13日(撮影:北條直樹)

この日はチベット亡命政府の国会が始まる日で、首相・7人の大臣・議員や政府関係者が集まった議会で、全員が名前を呼ばれ起立し紹介を受けました。公の場で紹介されて感謝の拍手をされるのはこれが初めてのことで、とても光栄な出来事でした。

チベット国会の様子。2017年3月14日(撮影:北條直樹)

その直後が休憩時間だったのですが、退席されるロブサン・センゲ首相に感謝を伝えると、「後で来てください。」とのこと。予定になかったことなので驚きましたが、後に教育省から確認をとると、最終日13時半に首相官邸まで来てほしいとのことでした。

実はこの1月に大阪で講演があった際にも呼ばれて訪問したのですが、スケジュールがずれあまり時間が取れなかったことを気にされていたみたいで、改めて時間を取ってくださったようです。そのご配慮に感激しました。

官邸にてロブサン・センゲ首相と。2017年3月16日(撮影:北條直樹)

センゲ首相はいつもユーモアたっぷりで、ずっと笑わせてくれます。ハーバードで博士号をとったインテリジェンスと、政治のトップとして難民社会のハードな舵取りをするリーダーシップ、日本が好きな奥様お嬢様の話をされるときの優しさ、そして神戸牛と日本酒が好きでとてもユーモアな一面をもつリーダーです。実は年齢がひとつ違いというのも親近感を抱く一因だと思います。

ロブサン・センゲ首相と。2017年3月16日(撮影:北條直樹)

そして、思わぬ感激の出来事が!レインボーチルドレン奨学生が今年100名になることを記念して、政府として公式な感謝の盾を下さったのです!

チベット亡命政府より戴いた盾。2017年3月16日(撮影:北條直樹)

これは新しくデザインされたもので対外的に渡すのは初めてだとのことです。なんという光栄!そしてこれまで日本に対してこの盾を渡すのも初めてだとのことです。人は予想外のことや予想以上のことに対して感動が生まれますが、まさにサプライズな出来事で、その内容も身に余ることで本当に感激しました。

最後には、来年訪日する時には大阪滞在を2日間確保し、レインボーチルドレンの事務所を訪問するという約束をしました。(団体事務所を建設しないとならないですね)

ロブサン・センゲ首相とメンバー全員で。2017年3月16日(撮影:チベット亡命政府)

こうして、ダライ・ラマ法王という宗教のリーダーと、ロブサン・センゲ首相という政治のリーダー、今のチベットの2人のリーダーにレインボーチルドレンが歩んできたこれまでを評価いただくというメモリアルな訪問となりました。

この一連の模様は、日本代表団の訪問として、チベット亡命政府の公式サイトであるtibet.netに3枚の写真と共に紹介されました。

 

これも、ご支援いただいている個人や企業・団体の皆さま、関係者の皆さま、共に同じ方向に向かって頑張ってくれるメンバーの仲間たちのお陰です。本当にありがとうございました。

そして、この活動を続けていけるのも、チベットやスラムの若者たち、子どもたちがいるからです。今回もたくさんの感動の瞬間がありました。たくさんの輝く虹が見えました。

サラ大学で42名の奨学生たちと。2017年3月15日(撮影:北條直樹)
デリーで10名の奨学生たちと。2017年3月19日(撮影:北條直樹)
ペトンスクールで新たなキッズカメラたちと。2017年3月15日(撮影:北條直樹)
デリーで元奨学生たちと。2017年3月17日(撮影:北條直樹)
デリーで卒業生たちと。2017年3月17日(撮影:北條直樹)
デリーで元奨学生・卒業生たちと。2017年3月17日(撮影:北條直樹)
スラムで新たなキッズカメラたちと。2017年3月18日(撮影:北條直樹)
スラムの奨学生リーダー・サンタンと。2017年3月18日(撮影:北條直樹)

これまで5年間歩んできた道は決して平坦ではありませんでしたが、真っすぐに進んできました。学校建設、高等教育支援、リーダー育成と徐々に明確になってきた目標は、「認めあい」「分ちあえる」ひとつの地球という最終ゴールに向けて、未来のリーダーたちにバトンを渡すまでこれからも進んでいきます。

「教育は世界を変える!」

これからもよろしくお願い申し上げます。

 

10日間のプロジェクト活動の報告はこれから随時アップしていく予定です。