再び直面したスラム撤去と今後のスラム支援の方向性


 

「あのスラムは6月に強制撤去されたようです!!」

インターンのダイキからの報告でした。

この秋のスタディツアーにおいて、ダラムサラにあるごみ山に隣接したスラムを訪問しようと計画し、ダイキがそのスラムの調査にあたっていました。

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「え?ダラムサラにスラムがあるんだ?!」

そのスラムに関心を持ったのは、今年春にペトンスクールを訪れたときに見せられた一枚の写真からでした。

ペトンスクールはキッズカメラプロジェクトで生徒たちにカメラを提供しているチベタンスクールです。

写真部の先生のパソコンで見せてもらった写真の中に、ごみ山と牛が写されたスラムの一枚がありました。生徒が撮ったものです。

スラムプロジェクトで見てきた首都デリーに存在する無数のスラム、首都近郊の都市メーラトで見た巨大なごみ山スラム、そしてムンバイで視察した世界最大規模ダラヴィのスラム。その他、世界中に分布するスラムは都市部に存在する社会問題だという認識がありました。

地方都市や農村部にももちろん貧困地域は存在します。しかしそれは、都市部への出稼ぎや不法居住といった「都市型スラム」とは異なる形成過程をもち、ごく小規模なものです。

ダラムサラは北インドの山間部とその裾野に広がる地域であり、お世辞にも都市部と言えるような場所ではありません。

あとで判明したのですが、写真のダラムサラのスラムは800人が居住していました。しかも、他にもスラムが点在しているという話です。

ダラムサラにおけるゴミ問題にも関心があり、その集積地に隣接するスラムの形成過程や、住民たちの生活、子どもたちの教育状態を調査する目的で、訪問を計画していました。

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スラム解体によって300家族が住居を失ったことを報じたヒマーチャル・ウォッチャーの第一報(2016.6.20)。

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ダラムサラ市長の通告・対応と、スマートシティ計画を報じたヒマーチャル・ウォッチャーの第2報(2016.6.23)

2022年までにすべての国民に住居を提供することを掲げたモディ内閣の政策 “Housing for All by 2022”  Missionについても触れています。

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立ち退き11日後。今回の措置は、住宅・衛生・教育・水への権利という基本的権利を無視したものであり、任意立ち退きの前に突然行われたことを報じるヒマーチャル・ウォッチャーの第3報(2016.6.29)

ここには35年間住み続けてきたスラムの住民たち1500人の権利と共に記事が書かれています。

 

ちなみに、このスラムは解体後、住民たちは幾つかの場所に分散されており、視察は困難となりました。今回の秋ツアーでは、これまでこのスラムを支援してきた現地NGO Tong-Len Charitable Trust の事務所を訪問して、詳細を伺うことになっています。

今年の春にスラム第3期計画の中止を決断したときも、背景には昨年末にニューデリー西部で突然スラム撤去が始まり、またたく間に1200世帯がブルドーザーで壊された事件がありました。

もはやインドにおいてスラムを支援対象とする場合、現在の居住地区と一体化した「場所」で捉えるのは難しいのかも知れません。学校建設を考えた場合、将来撤去されるリスクが必ず存在します。変動する要素をベースに計画を立てるのではなく、そこに住む子どもたちという「人」単位で教育支援のあり方を構築する必要がありそうです。

それらを受けて、現在インド行政もしくは現地NGOとの協働の道をさぐるための活動を始めました。またご報告致します。