スラム第3期計画の中止について


 

レインボスクール建設の中止について

いつもレインボーチルドレンを応援いただき、誠にありがとうございます。この度、レインボースクール第3期計画における、スラム(シャディプール)学校建設計画を中止することを決定致しました。中止に至った経緯と背景をご報告致します。

レインボースクール第3期計画

 

建設費用の見積もり額について

新学校建設を決定した昨年10月以降、建設着手を急ぐ現地に対して正確な見積額の提示を求めました。

当初出てきた概算提示額は、建設計画現場を視察した上でのこちら側の所定経費に対し、2倍ほどの金額でした。当然受け入れる訳にはいかず、他ルートで現地の材料調達費・人件費の把握を進めながら交渉を重ねました。

しかし、この金額が必要最低限だとする現地建設責任者はいっこうに譲らず、我々の提示額を受け入れてもらえることができませんでした。

学校建設予定地でみなさんと一緒に 2015.10.2
学校建設予定地で周辺住民と一緒に 2015.10.2
我々が提示額を譲りたくなかった理由

もちろん提示額をすんなり受け入れ、早期に着手することは可能です。しかし、デリーのスラムは政府の政策によって否応無しに突然撤去される事実があります。我々には、皆様よりお預かりした大切な支援金を無駄にしたくはないという想いがありました。

事実、シャディプールのスラムは移設計画の青写真が存在し、一部移転住居の提供も開始されています。しかし、留まりたい住民側の意向との狭間で、”いつ”それが実行されるのかは不明でした。

新しい学校の建設を待ち望む子どもたちがいる一方で、将来の撤去を踏まえて最低限の設備で学ぶ場を早く提供したい我々の想いと、余分な設備と人件費を盛り込みたい現地責任者との交渉でした。

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シャディプールスラムの子どもたちと

 

突然のスラム撤去報道

そこへ電撃のニュースが走りました。ニューデリー西部で突然スラム撤去が始まり、またたく間に1200世帯がブルドーザーで壊されたのです。

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スラム撤去の報道

ちょうど見積り段階のタイミングで起きた別のスラムの撤去報道は、厳しい現実の実例でした。シャディプールのスラムにおいても「まだ(撤去は)ないかも知れない」ではなく、「将来確実にある」へと認識は変わりました。

「(撤去は)ない」と答えていた現地関係者は沈黙しました。それ以降、現地はこの事実に触れず、交渉も進みにくくなりました。

インドにおける学校建設の現実

インドでは学校建設は大人たちにとってはビジネスになります。数十万~数百万の建設予算は、現地ではまだまだ巨額な金額です。建設や運営に絡んで外国や政府から入るお金が、彼らの生活を潤す仕組みです。

学校の建設によって恩恵を受けるのは子どもたちだけではなく、そこへ関わる大人たちも含まれてしまうのです。それは決して現地NGOも例外ではありません。全てではありませんが、一般的なインド人がイメージする学校建設は、残念ながらそのようなものです。

その意味においても、直接関与することや、現地パートナーとの関係は非常に重要だと言えます。

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学校建設予定地周辺

 

一番大事なことは

明日突然撤去されるかもしれないスラムでは、建物の上物にお金をかけることが大事なのではなく、学校という建造物の前に、まずは教育を受けたい子どもたちが当然の権利として教育を受けられる機会を生み出すことが一番大切だと考えました。

その時に、ニューデリーのメトロ高架下で行われている青空教室の存在を知りました(訪問レポート後述)。学校という建物に拘っていた我々は、壁がなくても、机がなくても、教える大人たちと学びたい子どもたちが集まれば、そこは学校なのだと気付かされました。

教育の本質に目を向けること

レインボーチルドレンは、今本当に一番必要で、無駄にならないこと、に大切な支援金を使いたい。インターン以外に現地人材がいない我々にとって、建設計画やその後の学校の運営を任せる現地責任者は重要です。信頼を預けることができて、教育の本質への想いに共感できるパートナーとして、今回の現地責任者は不適でした。教育への想いよりビジネスへの想いが強かったのです。

一度走り出すと後ろに戻れないのが学校建設です。将来の後悔を未然に防ぐためにも、シャディプールのレインボースクール計画を白紙に戻すという判断に至りました。

 

今後のスラムプロジェクト取り組み

学校建設計画をあきらめない!

しかし、レインボースクールは必ず実現させます!
政府が関与しないスラムという難易度が高い区域において、様々な障害を乗り越え、時期を探りながら、スラムの問題を解決するための学校・地域コミュニティ一体型の提案に取り組んでいきます。
そのためにも、この問題を研究する研究生・専門家で参加・助言をしていただける方がおられましたら、ぜひともご協力ください。今後もさらに多くの方の参加をお待ちしています。
NPOレインボーチルドレンへのお問い合わせ

 

学校建設以外の方向性

学校という建物にこだわらない方向の一つの選択肢として、メトロ高架下の青空教室支援に対するアプローチを始めました。

  • インド・橋の下の青空教室訪問 (2016.2)
    メトロ高架下で220人のスラムの子どもたちが学ぶ、Free school under the bridge in Delhiを訪問しました。

青空教室

青空教室訪問レポートへ

 

ストリートチルドレンへの関心

スラムの質素な住居さえ失った子どもたちへの、基本的住居と基礎的教育支援についての支援に対するアプローチを始めました。

  • インド・ストリートチルドレンNGO視察 (2016.2)
    路上の子どもたちを保護する18のシェルター等を運営するNGO Sallam Baalak Trustを訪問しました。SBT

ストリートチルドレン視察レポートへ

 


 

レインボーチルドレンは、これからもインドのスラム問題について真正面から取り組んで参ります。今後もあたたかく見守っていただきますよう、宜しくお願い申し上げます。

 

<スラムプロジェクト>

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